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新規事業の説明が刺さらないのは「誰の何を変えるか」が抜けているから
新規事業を立ち上げた経営者が、社内会議やIR、営業先で事業内容を説明しても反応が薄い。プレゼン資料は整っているし、市場規模も語れる。それなのに「で、それは誰のためのものですか」と聞かれると言葉に詰まる。この現象には共通の原因がある。事業内容は語れるが、誰のどんな状況を、どう変えるのかを一文で言えていないのだ。
Business for PUNKの視点で言えば、事業説明とは自分の作りたいものを語ることではなく、誰かの現実を変える約束を一文で提示することである。ここが曖昧なままだと、どれだけ機能や技術を説明しても、聞き手の中に「自分ごと」として残らない。

手段と目的をすり替えていないか
説明が刺さらない新規事業の多くは、「何をやるか」を語ることに時間を使いすぎている。アプリを作った、サービスを立ち上げた、AIを活用した。これらはすべて手段であり、目的ではない。
聞き手が本当に知りたいのは、その手段によって自分(あるいは顧客)の状況がどう変わるのかという一点だ。手段の説明に終始すると、「便利そうだが自分には関係ない」という印象で終わってしまう。目的、つまり変化の中身を先に言語化し、手段はその後に添えるという順序の逆転が、多くの新規事業説明でできていない。

対象を広げすぎると誰にも刺さらなくなる
もう一つの典型的なつまずきが、対象を広く取りすぎることだ。「中小企業全般」「すべての子育て世代」「あらゆる業種の担当者」といった広い括りは、資料上は市場規模を大きく見せられるが、実際の説明の場では誰の心にも刺さらない。
これは精神論ではなく構造の問題である。対象を広げるほど、共通して言える変化の中身は薄まっていく。逆に対象を絞り込むほど、その人固有の状況に踏み込んだ具体的な変化を語れるようになる。刺さる事業説明は、対象を絞ることを恐れていない。

「誰の・何を・どう変えるか」を一文にする手順
この一文を作るには、感覚ではなく手順が必要だ。以下の三段階で言語化を進めると、精神論に頼らず具体的な形にできる。
ステップ1:現状の解像度を上げる
まず「誰」を一人の具体的な人物として描く。業種や役職だけでなく、その人が今どんな作業を、どんな頻度で、どんな不満を抱えながら行っているかを書き出す。抽象的な「中小企業の経営者」ではなく、「従業員20名規模で、月末の在庫確認を手作業で行っている経営者」まで解像度を上げる。
ステップ2:変化の前後を書き出す
次に、その人物の「今の状態」と「事業を使った後の状態」を、行動レベルで対比させる。感情や印象ではなく、何をしなくてよくなるか、何ができるようになるかという行動の変化で記述するのがポイントだ。ここで抽象的な言葉(「効率化」「最適化」など)を使うと、また元の曖昧さに戻ってしまう。
ステップ3:一文に絞り込むテスト
最後に「〇〇な人が、〇〇できずに困っている状態から、〇〇できる状態になる」という型に当てはめて一文にする。この一文を社内の複数人に読んでもらい、対象人物が思い浮かぶか、変化が具体的にイメージできるかを確認する。もし複数の解釈が生まれるなら、まだ対象か変化のどちらかが曖昧である証拠だ。

一文が定まると社内にも顧客にも伝わり方が変わる
「誰の何を変えるか」が一文で言えるようになると、社内での説明も、顧客への提案も、資料の作り方そのものが変わる。機能紹介から始まる資料ではなく、対象人物の状況から始まる資料になる。営業担当者も同じ言葉で説明できるようになり、社内での認識のズレも減っていく。
これは事業の魅力を誇張することではない。誰の何をどう変えるのかを正確に言語化する作業であり、地道だが再現性のある手順である。感覚や勢いに頼らず、一文が定まるまで解像度を上げ続けることが、新規事業の説明を刺さるものに変える最短距離になる。
まとめ
新規事業の説明が刺さらない背景には、手段と目的の混同、対象の広げすぎという二つの構造的な原因がある。「誰の何を、どう変えるのか」を一文で言えるかどうかが、社内にも顧客にも伝わる説明の分かれ目だ。現状の解像度を上げ、変化の前後を具体的に書き出し、一文に絞り込むテストを繰り返す。この地道な言語化こそが、新規事業を「語れるが伝わらない」状態から抜け出させる。
新規事業の軸足がぐらついていると感じたら、まずは「誰の・何を」を言語化する作業が有効です。大和では、事業の本質を整理し、社内外に響く伝え方をご一緒に考えるお手伝いをしています。事業説明の反応が薄いなら、一度ご相談ください。



